miki orihara
【展 望】
アメリカンダンスの歴史的流れを紹介したいと思うのは、ダンス界のパイオニアの作品を見る機会が現在、薄れてきているのを感じたからです。私はグラハムの踊りを踊る度、むずかしさを感じることはあっても、作品の魂が決して古くないこと、現在でも通用する作品であることを実感します。私のサブテーマでもある[温故知新]まさにグラハムの作品は、私にいつでも何かを教えてくれます。パイオニアと言われるグラハムやリモンの作品を踊れることは私の財産です。
グラハムが頭角を現す1920年代のアメリカ、時を同じく日本でもモダンダンスのパイオニアと言われる人々が活動を開始しています。両国のパイオニアと呼ばれる人々の作品を比較、紹介できたらと思ったのがこの公演をするきっかけでもありました。先ず初めの一歩としてアメリカを代表するパイオニアの作品を踊ります。近い将来日本のダンスパイオニアの作品を紹介する会、そしてアメリカと日本の交流ができるような会を持ちたいと考えています。
共鳴(Kyōmei)—Resonance
グラハム舞踊団に在籍27年。カンパニーのプリンシパルダンサーとして、マーサ・グラハムのすばらしい作品を踊る度、その作品の深さに触れ新しきを知る驚き、そして作品の心を体現することのむずかしさを感じていました。今はフリーランスダンサーとして毎日が身体への挑戦です。
La MaMa Moves! 2014の一環として、初めてのソロ・コンサートを行いました。私にとっては、新たな挑戦です。 プログラムは、グラハムの作品”サティリック・フェスティバル・ソング“(1932)、もうひとりのアメリカン・モダンダンスのパイオニアであるホセ・リモンの作品”ダンシズ・フォー・イサドラ”の中から、“メナード”(1971)、現在、演劇界でも実力を発揮しているマーサ・クラークの秀作 “ノクターン”(1979) 新進気鋭のアダム・バラックの新作、そして自作の5作品を踊ります。今の自分の肉体がこれらの作品の時の流れをいかに受け止め、時を超えたダンスの美しさを観客にどのように伝えることができるかと試行錯誤しながら毎日稽古に励んでいます。
グラハムが頭角を現す1920年代のアメリカ、 時を同じくして日本でも モダンダンスのパイオニアと言われる人々が活動を開始していました。数年でしたが、私もそのパイオニアの一人、高田せい子先生に教わった経験があります。
日本のパイオニアたちの初期作品群からは、モダンダンスがバウンダリーのない分野だったという事が伝わってきます。
サブテーマでもある「温故知新」、私自身が両国のダンスに触れ、感動を受けているからこそ、私が接点となって日本と世界のダンス・パイオニア達の作品を紹介しながらその特長を比較解説し、現在にいたるまでの世界のモダンダンス、コンテンポラリーダンスを概観する内容の公演シリーズを目指しております。
その第一歩の「共鳴ーResonance」です。
作品と作品の間、ジャズピアニストの大江千里さんにリフレクションと題し、踊りから得たインスピレーションを奏でていただき、最後のバラックの作品では大江さんにピアノと私の踊りを見ていただきます。
今回のプログラムは、自分のダンス人生の大部分を占めるアメリカでの踊り、その歴史的流れが見えるように、そして時をつなぎ、音とふれ合う瞬時を観客の皆様と共に[共鳴—Resonance]できればと思い今回のタイトルとしました。この機会が私自身、ダンサー、アーティストとして更なる出発となることを期待して11月の公演に望みます。
Resonance II
2014年に続き2回目のソロコンサ-トを行います。グラハム・ダンサーとして長年踊り続けアメリカ生活も長くなりました。舞踊人生をアメリカのモダンダンスと共に過ごし、この国のダンスの歴史的流れの素晴らしさに見せられ、歴代のダンスパイオニアの作品を伝えていきたいと痛感しています。 私のサブテーマ『温故知新』。アメリカのダンスパイオニアの作品を未来に伝えていきたい思いから、初めてのソロコンサ-トを 共鳴(Kyomei)- Resonance と題して30年代グラハム作品をはじめ70年代ホセ・リモン、70年代後半マーサ・クラークそして若手アダム・バラックの作品と自作を 2014年ラ・ママで発表しました。今回は、アメリカポストモダンの重鎮マース・カニングハムの作品,アメリカン・コンテンポラリー・ダンスの先駆的存在であるラー・ルボヴィチの作品、狂言師であり役者である石田淡朗と折原の初コラボレーション新作、若手シャルロット・グリフィンの新作では大江千里氏のオリジナル曲でのソロを発表します。Resonance IIでは、アブストラクトなモダンダンス、コンテンポラリーダンスに挑戦します。
Resonance III
グラハム・ダンス・カンパニーメンバーとして27年、通算39年のアメリカ舞踊生活で多くのアメリカンダンスのパイオニアの作品にふれる機会がありました。貴重な作品がフィルム等には残されても、実際に舞台でみる機会は減っています。アメリカのモダンダンステクニックを学んだ私にできることは、この国のパイオニアの作品を今一度、実際に見せることであると思い2014・2017年の2回の自主公演で、温故知新をテーマにアメリカのモダンダンスパイオニアの代表作を踊りました。
幼少期、日本で私は、高田せい子・山田奈々子舞踊研究所で舞踊を始め、高齢の高田せい子の存在は知っていましたが、マーサ・グラハムとほぼ同時代、日本のモダンダンスパイオニアとしての高田せい子の業績など知る由もありませんでした。2017年夏 東京の稽古場を訪ね高田せい子直弟子の山田奈々子氏に高田せい子代表作「母」を習得。石井小浪の直弟子佐藤典子氏を静岡に訪ね石井小浪作品「浜辺の歌」「月の砂漠」の2作を習得しました。
今回の公演では、石井小波 高田せい子 マーサ・グラハム ドリス・ハンフリーの作品の他に私のメンターでもあり、石井漠・石井小浪の舞踊詩を学んだ菊地 百合子氏の作品を紹介します。
両国のパイオニアたちがモダンダンス界に頭角を現した1920年代、その同時代性(similarity)を明らかにすることに意義があるのではないでしょうか。現代メディアの進歩は一日にして世界の情報をつかみ取ることができ、情報過多の中、個性が薄れつつあること、見えていないものが何かわからなくなっている今、 両国のモダンダンス創成期の作品を比べみることで、当時の豊かな個性 あるいは国民性を垣間みる機会を提供し、時代を顧みて改めて創作することの意義を次世代に伝えられるのではないかと思います。
歴史があるから今がありそして未来に続く。日本のモダンダンス界でもアーカイブ公演が新国立劇場で開催され注目を浴びています。私は、特に両国の比較からそれを展望したいと考えています。
アメリカでは、日本人モダンダンサーと言えば伊藤道郎が取り上げられても石井漠・小浪 高田雅夫・せい子が1920年代アメリカで公演し、セント・デニス、テッド・ショーンやドリス・ハンフリー等と交流があったことはあまりに知られていない事実です。日本人である私がアメリカでの経験を生かし、両国のダンスの接点をつなげ、文化の交流を図る手助けをすることが私の使命であると考え、今回レゾナンスIIIを企画しました。
<山田奈々子・折原美樹によるマスタークラス>
マスタークラスでは、日本からのゲスト山田奈々子(高田せい子直弟子)と折原(山田直弟子)がマーサ・グラハム・高田せい子・石井小浪・菊地百合子作品を紹介する。
高田せい子作品「母」、Martha Grahm作品 「Lamentation」、菊地百合子作品 「The Cry」
作品を覚えるだけでなく、作家のエピソードや思想そして時代背景をあわせて学び作品の理解を深める。
経験を問わず誰でも参加できるクラスにする。
石井漠、石井小浪のスタイルである舞踊詩とは、「テクニックはもちろん大切だが身体を言葉とし表現したいものを心で伝えること」がその本随であり、それは高田せい子、直接石井に師事した菊地百合子 そしてマーサ・グラハムやドリス・ハンフリーにも共通している思想である。作品の理解を深めることはもちろん作品を創作する手がかりとなるような機会を提供し、またクラスを通して両国の時代背景や文化を紹介する。
<レクチャー及びアーティストトーク>
ー1920年代から1950年代にかけてアメリカ・日本におけるモダンダンス創成期の同時代性—
歴史があり今がある、そして未来ヘ
片岡康子氏(元お茶の水女子大学表現学科教授)による講演(60分)。
同時に折原 山田 アメリカ側からもゲストを招きパネルディスカッション、公演後アフタートークも行なう。
1910-1920年代は、日本において、まさに大正デモクラシーの時代。文化、政治、社会の各方面における民主主義の発展期であり、日本のモダンダンス界も独自のスタイルを作り出した時であった。今回は、1920年代日米両国のモダンダンス創成期のパイオニアの業績紹介し、両国のダンスの同時代性を明らかにすることを試みる。日本から舞踊史研究家、元お茶の水女子大学表現舞踊学科教授片岡康子氏を招き講演。さらに、アメリカ側からもジェイコブス・ピロウのアーカイブディレクターのノートン・オーウェン氏を招き日米ダンス創成期の歴史をフィルムや写真でわかりやすく解説。 同時代に両国で何が起こっていたのかを明確にし、パイオニアの業績を通して次世代のダンスを志す人たちに新たな発見をする機会を提供した。専門家のみならず一般の参加者にも興味深いものとなった。
PROGRAM
共鳴 - Resonance
大江千里 ピアノ演奏
SATYRIC FESTIVAL SONG
サティリック・フェスティバル・ソング
振付、衣装 : マーサ・グラハム
オリジナル作曲: ワイズハウス
リコンストラクション作曲:パラシオス
音楽アレンジ: アーロン・シャーバー
リコンストラクト 1994年:ダイアン・グレイ、ジャネット・エイルバー
リコンストラクション照明:ポール・ズィーマー
作品初演:1932年11月20日 ギルドシアター、ニューヨーク
#1リフレクション
大江千里
メナード
「イサドラの踊り」より
振付:ホゼ・リモン
作曲:ショパン
リコンストラクション、演出:
カルラ・マックスウェル、ニーナ・ワット、リョウコ•クドウ
衣装:チャールス・トムリンソン
照明:クリフトン・テイラー
作品初演:
1971年12月10日 オハイオ州クリーブランド、クリーブランド美術館
#2 リフレクション
大江千里
ノクターン
振付:マーサ・クラーク
作曲:メンデルスゾーン
演奏:ギーズギング
衣装:ラス・ヴォーグラー
折原美樹
作品初演:1978年アメリカンダンスフェスティバル(ノース・キャロライナ)
#3リフレクション
大江千里
プロローグ
振付:折原美樹
作曲:野澤美香、ジャニス・イアン
衣装:ミツノ・ヨーコ
衣装スーパーバイズ:キャレン・ヤング
照明:クリフトン・テイラー
映像:トービン・デル・クォレ
美術:ポール・ズィーマー
初演:2014年5月8日 ラ・ママ劇場 ニューヨーク
「I Hear You Sing Again」ウッディー・ガスリーの作詞とジャニス・イアン作曲、ウッディー・ガスリー・パブリッシングとルード・ガールスプブリッシングの作品です。ジャニス・イアンの寛大な許可をへて使用しております。
***ポーズ***
メモリー・カーレント
記憶の流れ
振付:アダム・バラック
作曲:大江千里
衣装:キャレン・ヤング
照明:クリフトン・テイラー
折原美樹
大江千里
初演:2014年5月8日 ラ・ママ劇場 ニューヨーク
Resonance II
大江千里 ピアノ演奏
「Lamentation」
マーサ・グラハム (Martha Graham)
作品初演:1930年
#1 リフレクション
大江千里
「スクランブルよりソロ」
マース・カニングハム(Merce Cunningham)
作品初演:1967年
#2 リフレクション
大江千里
「ノーススター」より ”ビッグブレイン”
ラ-・ルボビッチ (Lar Lubovitch)
作品初演:1978年
#3 リフレクション
大江千里
「白拍子」
石田淡朗・折原美樹コラボレーション作
作品初演:2017年
***ポーズ***
「13のイラストレーションの絵 」
シャルロット グリフィン (Charlotte Griffin)
大江千里作曲・演奏
作品初演:2017年
Resonance III
ノラ・イズミ・バルトスィック ピアノ演奏
#1 スライドショー
写真提供:山田奈々子、小針侑起、オンラインより
La Cathédrale Engloutie (1910) クラウド・ドビッシー [抜粋]
「母」
高田せい子(1895−1977)
作曲:フレドリック・ショパン エチュードOp. 10 No. 3
衣装:高田せい子
監修:山田奈々子
作品初演:1938年
#2 スライドショー
写真提供:角南ファミリー、オンラインより
La Fille aux Cheveux de Lin (1910) クラウド・ドビッシー
「二つのエクスタティックテーマ」Two Ecstatic Themes
ドリス・ハンフリー(Doris Humphrey 1895−1958)
作曲:Nikolai Karlovich Medtner and Gian Francesco Malipiero
衣装:ポーリン・ローレンス
監修:カルラ・マックスウェル、サンドラ・カーフマン
作品初演:1931年
#3 スライドショー
写真提供:菊池ファミリー、佐藤紀子、オンラインより
サラバンド 3番(1887)エリック・サティ
「月の砂漠」
石井小浪(1905−1976)
作曲:佐々木すぐる
編曲:佐藤薫
衣装:佐藤紀子
監修:佐藤紀子
作品初演:1930年代
#4 スライドショー
写真提供:角南ファミリー、オンラインより
In a Landscape (1948) ジョン・ケージ [抜粋]
「悲哀」Lamentation
マーサ・グラハム (Martha Graham 1894−1991)
作曲:ゾルタン・コダイ
衣装:マーサ・グラハム
作品初演:1930年
#5 スライドショー
写真提供:菊池ファミリー、キヴニックファミリー、オンラインより
Les Trois Valses Distinguées du Précieux Dégoute: Son Binocle ( 1914) エリック・サティ
Sarabande No.3 [抜粋](1887) エリック・サティ
「クライ」The CRY
菊池百合子 (Yuriko 1920− 現在100歳)
作曲:アンドレ・ジョリヴェ
衣装:菊池百合子
作品初演:1963年
日米のモダンダンス界のパイオニア
Martha Graham, Doris Humphrey, 石井小浪、高田せい子の初期ソロ作品と石井獏/小浪に師事し、彼女らのスタイルである舞踊詩の影響を受け継いだ菊地百合子の作品を加え、計5作品を折原自身が踊りました。
菊地百合子氏は、マーサ・グラハムの右腕としてダンサー、教師、そして振付師として活躍し、日米両国の文化交流に貢献した人物であり(2012年 外務大臣賞受賞 現97歳)折原美樹のアメリカでの恩師でもあります。
関連アーティスト
マーサ・グラハム(1884−1991)
ドリス・ハンフリー(1895−1958)
高田せい子(1895−1977)
石井小浪(1905−1976)
菊池百合子(1920− 現在100歳)
マース・カニングハム
ホゼ・リモン
ラー・ルボヴィッチ
マーサ・クラーク
山田奈々子
片岡康子
大江千里
アダム・バラック
シャルロット・グリフィン
石田淡郎
ノラ・イズミ・バルトスィック
トーベン・デル・クオーレ
ポール・ズィーマー
ジェームス・
ジャニス・イアン
野澤美香
クリフトン・テイラー
マキシン・グロースキー
中瀬ゆき
スティーブン・ピア
ジョン・ディーン
平林伸恵
米井澄江
御巫朋子
アントニア・ミランダ
山川美枝恵
国吉トキオ
Miki Orihara
miki.o@mac.com miki3lotus@gmail.com kyomei.info@gmail.com
lotuslotus.org www.mikioriharasoloconcert- resonance.org
Production Stage Manager
Maxine Glorsky mglorsky@gmail.com
Stage Manager
Patrick Anthony Surillo patrickanthonysurillo@gmail.com
Lighting Design
Yuki Nakase yuki@yukinakase.com
yukinakase.com
LPAC Technical Director
Carmen Griffin cgriffin@lagcc.cuny.edu
Photography / Promotion Film Edit / Documentation
John Deane
www.johndeane.com Tokio Kuniyoshi
http://shootinglife.net/ Tomoko Mikanagi
http://heyabaji.com/ Antonia K.Miranda
antonia.k.miranda@gmail.com Juan Zapata
Web Design / Graphic Design
Nobue Hirabayashi mail@mtdesign.net
Costume Making / Web Design
Erico Platt erico@manhattantg.com
Production Manager Assistant of Miki Orihara Jacqueline Dugal
jacquimdugal@gmail.com Sumie Yonei
Coordinator
Taeco Ishida info@exroyal.com
Rehearsal Director
Stephen Pier Stephen@piergrp.org
Producer
LaGuardia Performing Arts Center Steven Hitt
stevenh@lagcc.cuny.edu steven@lpac.nyc
Japan Foundation